島に辿り着くまでの旅(7)

はじめに書いた通り半年間の休暇を得たわけだが、その期間に入っても何をしようか決めかねていた。これまでいくつかの海外旅行に行ってきたこともあって、周りからは今度はどこの国へ行くのか聞かれたが、僕自身、海外に行きたいという気持ちはこのときあまりなかった。僕は今まで、とりあえず海外に行きたかったのではなく、今しかできなくて、経験したことのないものに触れてみたかった。それが今まで海外の旅だったわけで、実際に行く場所はどこでもよかった。
それに、そもそもそんな長期間海外で放浪するお金もなく、かといってリゾートバイトで時間をお金に変えるようなことはしたくはなかった。正直、お金が沢山あれば何も考えずに海外を放浪していたかもしれない。考えてみればただの我がままだが、普通だったら訪れる事のないこの歳での半年の時間を無駄にしたくないという気持ちが強かった。

初めはもう長いこと北海道に住むことはないと思い、北海道内で農業や畜産、漁業の住み込みバイトを探しまくったが、冬の期間の仕事が少なかったり、意外と条件に合うようなところが見つからなかった。
それから北海道に限らず範囲を広げ、地方のゲストハウスなどでの住み込みバイトも考えた。その土地での生活が仕事になり、それなりに知り合いや仲間が出来ると思ったし、そしてそんなことは長期休暇にしかできないことだと思った。それでも長期休暇の過ごし方にしてはありがちで、仕事内容や暮らしが少なからず想像できるし、自分がこの期間に本当にやるべきことなのか自信がもてなかった。

そんなとき、離島ワーホリのホームページを見つけた。
見たらわかるが、数多の求人とは全く違っていて洒落たデザイン、写真多めである。しかし写真が多いわりに詳細は書かれておらず、実際の内容はほとんど見えてこない。この離島ワーホリは、島で働くことを通して旅をする、というものだった。なんかよくわからないけど異彩を放ち、旅という言葉と写真から思い描く暮らしに興味を惹かれ、あたまの中に強く残った。そしてこの離島ワーホリは、お金はないけど旅をしたかった自分に合っている気がして、もしかしたら何か面白いことが待っているんじゃないかと思った。

数日間、ブラウザのタブに残して考えた後、申し込みフォームから連絡をした。折り返し連絡が来て面談日を決め、スカイプのテレビ電話で面談をした。面談では志望動機などの当たり障りのない質問をされたあと、仕事やシェアハウス、注意点について説明されたが、それでもまだどんな生活になるのか想像ができなかった。そのあと数回のメールのやりとりをし、詳しい仕事内容すらわからないまま来島日を迎えた。それでも不思議と心配はしておらず、自分に何が待っているのか楽しみだった。

12月1日、バスで米子まで行き、フェリーに乗って本土を離れる。本土から隠岐諸島までは60km離れていて3時間。このとき僕は、向かう島がどんな島なのかまだ知らない。隠岐諸島についたあとフェリーを降り、人でいっぱいの小さい船に乗り換えて目的の島へ向かう。すでに日没時刻を過ぎていて辺りは暗く、船からは建物の明かりが少し見えるくらいで、島の様子は全くわからない。乗り換えてからほんの数分で到着し船を降りる。

結局、何もかもがわからないまま、僕は海士町に辿り着いた。

  

   


島に辿り着くまでの旅(1)
島に辿り着くまでの旅(2)〜インドへの旅〜
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島に辿り着くまでの旅(6)〜キューバへの旅〜
島に辿り着くまでの旅(7)