島に辿り着くまでの旅(4)〜ネパールへの旅〜

 

大学で部活を引退したあと、それまで時々行っていたトレッキングをするようになった。その頃は連休を見つけては北海道の有名な山をトレッキングしていたし、キルギスに行った際たまたまトレッキングをしたことが思いのほか気持ち良く、海外で山歩きがしたいと思うようになった。そこで長期休暇を使って2018年3月にネパールはヒマラヤ山脈で海外トレッキングをした。ヨーロッパや南米にも魅力的なトレッキングコースはあるが、資金不足のため航空券が安くておなじみのアジア圏であるネーパルに決めた。

ネパールはトレッキングコースが充実している。これまで特に大きな目的なく海外に飛んでいたが、今回の目的はアンナプルナベースキャンプまで行くこと。アンナプルナは地球に14ある8000m峰のひとつ第10番目に高い山で標高8091mある。もちろん行くのはベースキャンプなのでそこまで高いところまでは行かないまでも4200mあり、特殊な装備はいらないが往復で1週間ほどかかる。この他にもエベレストを見にいくトレッキングコースなどがあるが、このアンナプルナ内院トレッキングは、4000mの地点から7000m級の山々に囲まれることができる特殊な地形をしている場所まで行くことができるトレッキングコースのひとつだ。とはいっても一般的なコースのひとつで全く難しいことはない。

「朝のカトマンズ」


3月10日、ネパールの首都カトマンズにあるトリブバン国際空港に着陸した。この空港は世界空港ランキングワースト3位に選ばれたことがある空港で、いろいろあったが、乗客の預け荷物を機体まで人力で押していたのが新鮮だった。またこの日の2日後、空港で数十人が死亡した墜落事故が起こる。少し不安な空港だった。

飛行機から降り空気の匂いを嗅いだ瞬間気づいた。その匂いが去年行ったインドの匂いと全く同じで、1年も前の匂いが思い起こされた事に思わずニヤけてしまった。

「トリブバン国際空港、手押し」



アンナプルナ内院へ向かうにはポカラという街が拠点となる。カトマンズで一泊した後、高速バスでポカラへと向かった。ここではアンナプルナ保護地区への通行許可証を購入したり、トレッキングの道具をひと通り揃えることができる。許可証を取った後、登山道具を揃えに買い物に出かけた。ポカラには小さな登山用品店がいくつもあるが、安いものは全て、どう見ても偽物である。ユニクロのタグがついたウルトラライトダウンにTHE NORTH FACEのプリントがしてあったりした。

寝袋、靴、フリース、水筒などを購入したあと、床屋で髪を切ってもらった。切るのは少しだけと何度も念を押し、刃物が擦れる高い音がするハサミで、終始大きい鼻歌を歌いながら切ってもらった。

このポカラからこれから向かうヒマラヤ山脈を見ることができるのだが、小雨の降るどんよりとした天気で見ることはできなかった。

「バスターミナル」

「ポカラ」


次の日の早朝タクシーで登山道の始まりPhediまで進み、アンナプルナベースキャンプまで歩き始めた。道中には数kmごとにロッジが数件ある街があり、そこで食糧や水を購入したり、食事をしたり、宿泊することもできる。食糧、調理器具、テントなどの重い荷物を背負っていく必要がないためトレッキングする環境が良く整備されている。昨日に引き続き天気が良くならない中、Chhomrongまで進み一泊した。夕食はどこのロッジでも殆どダルバートという料理を食べた。ご飯と、銀のカップに入ったカレー2種、サラダ、漬物が大皿に乗っている料理で、このダルバートの良いところはダル豆のカレーとご飯が食べ放題というところだ。長時間歩いて消費したカロリーをダルバートで貯め込む。トレッキング中、身体はこのダルバートで動いていた。

このChhomrongのロッジからはアンナプルナ山群が見えるはずだったが、結局夜まで何も見えなかった。

「タクシー移動」

「曇り」


翌日の朝、部屋の扉を開けると、目の前には予想していたより遥かに巨大な山、アンナプルナ・サウスとマチャプチャレがあった。この日まで曇っていて山体を見ることは出来ていなかったため、これほどまでに近くにきていた事に気付かなかったし、その巨大さは感動を超えて恐怖を感じるほどだった。それに山頂が朝日に照らされ白く光っている山々は綺麗だった。

この日はアンナプルナベースキャンプ手前のマチャプチャレベースキャンプまで向かった。マチャプチャレは標高は6993mと周りと比べて高い山ではないが、このアンナプルナ保護区のなかでも目立つ形をした映える山だ。神聖な山のため誰も登頂することができない未踏峰だということもかっこよさを倍増させる。

「Dovanの街」

道中では、日本の登山と同じようにすれ違う人と挨拶を交わす。日本と違うのはナマステ〜と言う事。1日で100回ほど言った気がする。また、シェルパ族と何度もすれ違った。ガイドをしたりトレッカーの荷物を代わりにもったり、物資を運搬したりしている。彼らは大荷物を背負いサンダルで山道を歩いていた。貧しい彼らにとって観光客から得られる収入は大きいそうだ。

「小さな街」

「シェルパ」

マチャプチャレベースキャンプに到着する頃には天気が悪くなり山が雲に隠れてしまっていた。午後は天気が曇りやすいらしい。日が陰ると一気に気温が下がり寒くて外に出ていたくなくなる。それでもダルバートを食べ終え、夕暮れ時に外にいると一瞬だけ山頂が赤く照らされたマチャプチャレを見ることができた。ロッジに泊まっている他のトレッカーもそれに気づいて建物から出てきたが、1分もしない間に、流れの早い雲によって隠れてしまった。

夜になり気温も下がる頃には雲はすっかりなくなった。空には距離感がわからなくなるほどの無数の星が見えた。周りに光がなく標高が高く空気がキレイなためか、今まで見てきた星空の中でも群を抜いて見えすぎる星の数に圧倒された。月なみな表現だが、見えすぎて距離感が分からず、星の光がすぐそこにあるように見えてきて、触れそうな気がしてくる。ここまで綺麗な星空は今後、なかなか見られないだろうと思った。

「アーベントロート」

「星空」


次の日、マチャプチャレベースキャンプから、目的地である周りを7000m級の山々に囲まれたアンナプルナベースキャンプへ向かった。歩行距離や標高差もそれほど大きくないが、標高はすでに4000mを超えている。これまで高度順応をせずいつものペースで進んできたので、高山病の予防のためにも少しゆっくりのペースですすむ。午前中はとても天気がよく、進むにつれて周りを山々に囲まれている中にいることが良くわかった。こればかりかは写真では全く伝わらない景色だが、3~5km遠くにある標高差2~4kmの高さの山脈に囲まれているため、山頂を見上げれは首は45度上を向く。もはや巨大な壁で綺麗ではあるがまたもや恐怖感じるほどの景色で、とにかく神聖な何かを感じてしまうほどだった。

早い時間に目的地であるアンナプルナベースキャンプに到着した。ベースキャンプには意外にも多くの人がいて、ロッジの外でくつろいていた。わざわざここまでギターを背負ってきた人や、赤ちゃんを背負ってきた夫婦など、着々とこのゴール地点に到着してきていた。
それまで隠れていたアンナプルナもこの場所からは良く見えた。この山の死亡率が30%という情報と相まって、山頂に流れている雲が人を寄せつけない感じを醸し出していた。

「ガンダルバチュリ」

「アンナプルナ・サウス」

ひとりベースキャンプから少し先まで雪の上を歩いて行き、何かをするわけでもなく内院の景色を堪能した。風はあまり吹いておらず、天気も快晴だったため気持ちよかった。それでも酸素が薄いからか、少し無理をして動くと心なしか息が上がるのが早くなっている気がした。1時間ほどのんびりしてから昼食を食べにロッジへ戻った。夜になると天気が荒れ、山は見えず雪が積もった。汗で濡れたシャツを干しそびれてしまった。
これまで高山病の症状は出ていなかったが、頭が締め付けられるような頭痛がして夜中に何度か目が覚めた。0℃を下回った部屋でキンキンに冷たくなった水を飲んでやり過ごした。

「マチャプチャレ」

「悪天」

次の日ベースキャンプ周りをうろうろした後、2日かけて来た道を戻りGhandrukを通ってKimcheからバスに乗ってポカラに帰った。ポカラには1日滞在した後、カトマンズに戻った。来た時と違って、ポカラからカトマンズへ向かう帰りのバスから、マチャプチャレが見えた。

「ポカラから」


思ったよりトレッキングが早く済んだため、帰国までの残りを主にカトマンズのタメル地区で過ごした。タメルはヒッピーの聖地のような場所で、ゲストハウス 、レストラン、スーパー、パン屋、本屋、登山用品店と大概の物は揃う。特にすることはなく何度も同じ通りを歩いていた為、しつこくクスリを売ってきた男に1日に3回遭遇した。3回目にあったときはもう売ってこようとはせず、遠くからお互い会釈をした。次の日、4回目に会った時は男の方からわざわざ声をかけて挨拶してくる良いやつだった。

旅行中、長期でもないので自炊することはなく、全て外食である。僕自身、日本が一番食べ物が美味しいと思っていることもあり、今まで行ってきた国の食事には、美味しいよりも現地の味だったり珍しいことを期待している。その国が好みの味も感じられる。
タメルで売っている食べ物は、パンは砂糖がたっぷり入っていて基本パサついていたりと、本当に美味しい料理にありつけることは生意気にも少ない。そんな中で美味しいカレー屋を見つけた。タメルの北東にあるWestern Tandoori & Naan House。多分Tripadvisorなどでは有名なのかもしれないが、たまたま宿の正面にあって地球の歩き方にも乗っていないカレー屋がこんなに美味しいとは思わなかった。店の入り口ではタンドール窯でナンを焼いているのがよく見えて、ガーリックナン、チーズナンどれも美味しい。カレーも美味しい。ここはおすすめ。他にも、地球の歩き方にも乗っているがNew Everest Momo Centerも安くて美味しい。テーブルの真ん中に水の入ったピッチャーがあるが、コップは無くみんな器用に口をつけずに直接飲んでいた。


「タメル地区」

「SIM CARD」


タメルにいても仕方がないので、少し離れた場所まで映画を見に行ったり、カジノへ行ったりした。カジノに行くのは2回目で一年前にマカオで行った以来だった。その時は4万円を失っている。

背丈の二倍はある高さの扉の前にいる警備員にパスポートを見せて入場した。ネパールのカジノにはネパール人は入ることは出来ない為、中にいたのは9割インド人、残りは中国人。日本人などいる気配は全く無く、そもそも若い人がほとんどいなかった。台の後ろで賭け方などを見て探り、緊張でうろうろした後決心してバカラの台についた。同じ台についている人はあまり大きなチップを使わず細々ベットするため、自分がカードを絞ることが多くあった。インド人に囲まれ視線が集まる中カードを絞ったり、1万円以上ベットするのは緊張で嘘のように手が震えた。結局2時間ほど台について6万円が9万円までになった。しかし帰国のための国際線の飛行機が大きく遅延したため、関空から新千歳までの飛行機に乗ることが出来ず、増やした金で航空券を買う羽目になりチャラになった。


帰国が近くなると、2週間ほどがっつり休んでいるバイト先や、仲の良い友人に渡すためのお土産を、その国のスーパーで買う。その国の食生活がよく写されているからスーパーはとても面白い。もっとも、いい土産があるとは限らないが。土産として、パパドという薄いクラッカーのようなもの、よくわからないドライフルーツ、チャウチャウというネパールで大人気のインスタント麺、マサラティーの茶葉、エベレストビール、タバコを買った。
毎度のことながら、美味しいかどうかではなく、珍しくて面白そうなものを買って行くせいか、買って行く土産は全然人気がない。ただ今後も誰もが喜ぶような土産を買って帰るつもりはない。

「映画の待合室」

「夜のカトマンズ」 



島に辿り着くまでの旅(1)
島に辿り着くまでの旅(2)〜インドへの旅〜
島に辿り着くまでの旅(3)〜中央アジアへの旅〜
島に辿り着くまでの旅(4)〜ネパールへの旅〜